いつもの今日に革命を

【2】カッコつけてる自分を受け入れるには

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前回(第1話)の話はこちらをクリック

 

<この記事の読了時間は約6分です>

北村:じゃあとりあえず座ろっか

ベンチに座るとオッサンは自分のことを話し始めた。

サブ:今はこんな風になっちまったが、こう見えて1年前まではレストランで料理長をやってたんだ

サブ:レストランはその地域じゃそれなりに有名な店で客も多かったし、評判もまずまずだった

サブ:けど、俺とスタッフの仲はずっと険悪だった

サブ:俺は自分のお陰でその店が回ってると思ってた、客は俺の料理が美味いから来てくれるんだ、って

サブ:だから周りのスタッフにもありがとうと言ったことはなかったし、むしろもっと俺に感謝しろと思ってるぐらいだった

サブ:スタッフが汚れの残った食器を渡したり、注文を間違えたりしただけで怒鳴ることは日常茶飯事

サブ:それでも周りや店長が我慢してくれてたお陰で店は回ってたんだが、そんな恵まれた環境なのにもかかわらず俺はいつも「あいつのここがダメ」「もっとこうしろ」みたいな文句ばかり言ってた

サブ:でも店長が変わって俺はその店にいられなくなっちまんだんた

サブ:新しい店長は俺のことを露骨に避け、それに倣うかのようにスタッフも俺を避けるようになった

サブ:俺が何か頼みたそうにしてても誰もこっちを向いてくれない、声もかけてもらえない、目線すら合わせてもらえない毎日が続いた

サブ:最初は俺も我慢してたんだけどよ、孤独ってのは思った以上に苦しかった・・・

サブ:来る日も来る日もみんなに無視されて、料理を作っても何も言ってもらえない

サブ:そうやって心がダメになっちまったせいで体もダメになっちまったんだ

サブ:そこからはあれよあれよという間にこんな感じだ

サブ:バカだよな・・・全部自分が悪いのに、それすら自覚してなかったなんて

月島:そうだったんですね

俺はオッサンに冷たい態度をとったことを後悔した。

月島:そのお店は今は?

サブ:最近潰れちまったみたいだな

サブ:詳しいことは知らねぇが、味が落ちたとか接客の質が落ちたとか言われてたらしい

サブ:まあもう俺には関係ねぇけどな

月島:未練はないんですか?

サブ:ない・・・って言ったらウソになるな、俺が店を潰したと思ってる

月島:そんなことは

サブ:いいんだ、俺が今更どう思ったところで店は戻ってこねぇんだから

サブ:俺は一生この罪を背負っていくつもりだ

月島:辛かったですね・・・

 

■怒りのワケ

北村:ふーん、で?

月島:で??

サブ:ん?

サブがきょとんとした目で北村を見る

何が「で」なんだ?

北村:で、おじさんはこれからどうするの?

サブ:俺のことはサブでいい

北村:うん

サブ:いや、特に何も考えてねぇな

北村:じゃあサブは何も変わってないんだね

サブ:は?

さっきまで悲しそうだったサブの顔が突然歪み始める。

月島:おい、北村!ちょっと待て!

だがコイツが俺の言うことを聞くはずもない。

北村:だって他人事じゃん、今の話って

北村:サブは責任感じてるんでしょ?一生罪を背負ってくんでしょ?だったらなんでどうやってその責任を果たすのか、罪を償うのか、っていうのがないの?

北村:罪を感じて一人で打ちひしがれてさ、それはカッコつけてるだけじゃないの?

待て待て、お前は何を・・・。

サブ:お前に何が分かる!!

サブが声を張り上げる。

ほら言わんこっちゃない、会ったばかりの若造にこんなことを言われたら誰だって怒るに決まってる。

北村:僕には何も分からないよ

サブ:何も分からないクセに偉そうなことを言うな!!

北村:何も分からないから聞いてるんじゃない

北村:カッコつけてるだけじゃない、俺は変わった、って思ってるなら、どこがどう変わったのか教えてよ

サブ:うるさい!黙れ!黙れ!黙れ!

北村:いや、黙らない!

月島:北村!

北村:月島は黙って!

月島:うっ・・・

北村:サブは孤独が辛かったんでしょ?本当はもっとみんなと仲良くしたかったんでしょ?だったらいつまでも昔の自分を引きずってちゃダメだよ!

北村:辛いときはただ泣けばいいんだよ、罪を背負うとかどうだっていいじゃん

北村:みんなに無視されて心も体もボロボロになってさ、ホームレスになってまでそんなもん背負わなくていいって・・・

北村:どんだけいい人なんだよ・・・バカじゃねーの!

そう言いながら北村の目からは涙がこぼれた。

サブ:お・・・お・・・おれ・・・

北村の言葉を聞いて、隣にいたサブが泣き崩れる。

北村:そう、それだよ、変われたじゃん

サブ:あ・・あ・・・あり・・・が・・・

感情が高ぶりすぎて言葉にならない。

その場で冷静なのは俺だけだった。

俺はふたりと一緒に泣けない自分に気持ち悪さを感じていた。

 

■缶コーヒーの意味

10分ほどして、ようやくサブが泣き止んだ。

北村:落ち着いた?

サブ:あぁ・・・あんなこと言われちまったら泣くしかねぇじゃねーか

北村:そうかなぁ?

サブ:凄く嬉しかった、あんなこと言われるとは思ってもみなかった、ありがとよ

北村:僕は思ったこと言っただけだから

北村:でもよかった、サブが思った通りの人で

北村:お金をせびってくるようなホームレスだったらどうしようかと思ったよ

サブ:ははっ、そりゃよかったな

サブ:そういや和希はどこ行ったんだ?

月島:はい、これ

俺はベンチの後ろから二人に缶コーヒーを渡した。

北村:え、なんで?

月島:いいから飲めよ、それとも金払えって言ってほしいか?

北村:いいとこあるじゃん

月島:うっさい

俺はこうせずにいられなかった。多分自分だけ仲間外れなようで寂しかったんだと思う。

ただこのときの俺にはそんなことを素直に言えるほどの勇気はなかった。

つづく。

 

【教訓】

触れられたくない弱みがあるとき、僕らはカッコつけたがる。

しかし本当は誰もが弱みを肯定してほしい。

怒りは願望の裏返し。

相手の怒りに引きずられてはいけない。

 

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28歳のときに起業し、セミナーやコンテンツ販売を何年か行うも途中で挫折。今は再出発のために某飲食店のアルバイトを通してチームビルディングを実践中。個人ではコーチング、オウンドメディアのプロデュース、小説の執筆などを行っています。
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