いつもの今日に革命を

アフォーダンスの意味を6つの具体例で解説しよう

アフォーダンスって美味いのか?

ども、杉野です。

今やどんなもののデザインにもアフォーダンスの概念を取り入れることは、ユーザビリティを向上させる上で不可欠となってきました。

僕は製品開発や建築の専門家ではないですが、アフォーダンスという概念の重要性は人一倍理解しているつもりです。

日常にアフォーダンスの概念を取り入れることは、人生の質を上げると言っても過言ではありません。

そこで今回は身近な製品や道具、建築の例などを取り上げて、アフォーダンスの基本概念や応用の仕方を分かりやすく解説していきたいと思います。

 

 

1.アフォーダンスとは何か

まずはアフォーダンスの定義を確認しておきましょう。

アフォーダンスとは、ジェームズ・ジェローム・ギブソンというアメリカの心理学者が作った造語で、あるモノに内在している人間が選択しうる行為の可能性、というような意味です。

例えば今僕の目の前にはパソコンのキーボードがありますが、このキーボードを「キーボードとして」使うことはキーボードの可能性(使い方)の1つでしかありません。

このキーボードを叩けば効果音を発する「楽器として」使うこともできるし、足で踏めば「足のツボ押しとして」使うこともできるかもしれません。

僕らがモノをどのように使う場合も、モノの側から「キーボードとして使ってよい」「楽器として使ってよい」「ツボ押しとして使ってよい」というある種のメッセージが送られてきているという風にアフォーダンスの概念では考えます。

このように、モノがメッセージを送ってくることを「モノがキーボードとして使ってよいとアフォードする」と言います。逆に、僕らがこのアフォードを受け取ってモノをキーボードとして扱うことを「モノからキーボードというアフォードをピックアップした」と言います。

要するにアフォーダンスとは、このアフォードとピックアップの相互作用を意味し、これらの作用がスムーズであるほど使用時のストレスは減り、そのモノはアフォーダンスが適切にデザインされていると言えるワケです。

 

 

2.アフォーダンスの具体例

では、世間ではアフォーダンスがどのように取り入れられているのか。

いろんな角度から例を見ていきましょう。

 

 

2-1.アップルの製品

まずベタな例としてアップルのiPhoneやiPad、iPodなどが挙げられます。

iPadは機体を逆さにすれば見る側に合わせて画面が動くようになっていますが、あれはiPadが「逆さにして使ってもよい」というアフォードを出し、それを人がピックアップしやすいようにデザインされています。

実際iPadでは機体を逆さにすることでユーザーに最適化された画面が自動的に表示されるため、ユーザーがアフォードをピックアップするストレスが何もありません

もし見る側に合わせて画面が動かなかったとしたら、ユーザーはアフォードをピックアップすることを諦め、元の向きに機体を戻すことになります。

iPadが登場するまではそれが普通だったので、そこに自覚的なストレスはなかったと思いますが、僕らはそれを無意識に「面倒だなぁ」と感じていたはずです。

つまりそれはアフォーダンスがちゃんとデザインされていなかったということであり、その見えないストレスをアップルの製品は解消したワケです。

 

 

2-2.任天堂Wii

Wiiのコントローラーもアフォーダンス的に適切なデザインが為されている良い例です。

テニスのゲームではラケットを振るようにコントローラーを持って動かせばそのように動き、マリオカートの専用コントローラーは実際にハンドルを回すのと同じ動きをさせてカートを操作できます。

これらは僕らが自然に行っている動きであり、それゆえに何のストレスもありません。

通常、ゲームのコントローラーは、こちらがゲームに合わせた操作を行う必要がありますが、Wiiは人間の自然な動きに合わせて操作できるようにコントローラーがデザインされています。

自然な動きとは、アフォードとピックアップの相互作用がスムーズな動きということであり、それをそのままコントローラーに取り込んだことにWiiの凄さがあるワケです。

秀逸な製品には、学ぶことがたくさんありますね。

 

 

2-3.ダイソンの扇風機

これは上記2つとは少し違った例になります。

ダイソンの扇風機は羽根を無くすことで、子供が羽根に指を突っ込んで怪我をするリスクを無くしました。これをアフォーダンス的に言い換えると面白いことが分かります。

子供とは、扇風機から「羽根に指を突っ込んでもよい」というアフォードをピックアップしてしまう存在だということです。

赤ちゃんが何でも口に入れてしまうのも、彼らがモノから「それを口に入れてもよい」というアフォードをピックアップしてしまっているからに他なりません。

つまり子供は普通の大人ならまずピックアップしない危険なアフォードをピックアップしてしまうワケです。

その意味でダイソンの扇風機は危険なアフォード自体を機体から無くした点で、よくデザインされていると言えるでしょう。

 

 

2-4.着る毛布

着る毛布が流行り出したのは何年も前のことですが、これは毛布から「着てもよい」というアフォードをピックアップすることで生み出された製品です。

寒い中で毛布に包まるなら、いっそのこと着てしまえばいい。誰かがそんなことを閃いたんでしょうね。

普通の人は毛布から「被ってもよい」というアフォードしかピックアップできませんが、稀有なピックアップ能力の持ち主がどこかにいて、その人が「着てもよい」というアフォードをピックアップしたということです。

もう一歩突っ込むと、毛布は「被ったまま動いてもよい」というアフォードを発していますが、僕らはそれをピックアップしにくい、もしくはピックアップできません

なぜなら、毛布を被ったまま動くと毛布がずり落ちてしまうし、手も自由に動かせないし、何より動き難いからです。だから僕らはやむなく毛布を脱がざるを得ないワケですが、そのストレスを着る毛布は解消しました。

毛布を着たまま動くことは、寒いときの動きとしては自然です。その意味で着る毛布も、やはりアフォーダンスが適切にデザインされていると言えますね。

 

 

2-5.Amazon GO

最近話題になっているPokemon GOならぬAmazon GOもアフォーダンス的に適切なデザインです。

Amazon GOのシステムでは、スマホにバーコードを表示させそれをゲートで認証するだけで、レジを通ることなく買い物をすることができます。

僕らが買い物する際に商品から受け取るアフォードは「すぐ食べてもよい」「すぐ使ってもよい」「すぐ持って帰ってもよい」というものです。しかし、今までの常識ではそれをピックアップすることができませんでした。

子供には「まだ食べちゃダメ!」と叱らなければならなかったし、レジに並ぶのは大人でもストレスがあったワケですが、そのアフォーダンスを最適化したのがAmazon GOなのです。

Amazon GOのシステムなら、商品をその場で食べても何の問題もありません。目の前にあるものはすぐ取り出して使えるし、レジに並ばずに帰ることもできます。考えてみれば、文明化するまでの人類はそうやって生活していたはずなんですよね。

つい1万年前ぐらいまで人間は獲物をとってその場で食べたり、余ったものは持って帰ったりしていたワケで、「レジに並ぶ」なんてのはごく最近にできた不自然な習慣にすぎません

そう考えると、Amazon GOは僕らを自然に回帰させてくれるものとも言えます。

 

 

2-6.紙の建築

最後は坂茂という建築家の紙の建築を紹介します。僕は建築に関してはズブの素人ですが、TEDで彼の動画を見たときは感動しました。

一体誰が紙なんかで建築を建てようと思うでしょうか?これこそまさに稀有なピックアップの最たるものだと言えます。坂氏は厚紙でできた芯の強度や軽さに注目し、そこから「建材に使ってもよい」というアフォードをピックアップしました。

紙は水に弱いというイメージがあるため、普通はそんなものを建材に使えるはずがないと考えがちですが、分厚くて硬い紙は僕らが思っている以上に強く、撥水処理などで補強すれば建材としても十分使えるものなのです

また僕らは被災すると学校の校舎や体育館から「寝てもよい」「休んでもよい」というアフォードを受け取る一方で、容易にそれらをピックアップできない状況になります

寝てもいいのは分かってるけど寝難いし眠れない、ということになる。

紙の避難所はそのストレスフルなアフォーダンスを最適化する、素晴らしくデザインされた建築なのです。

 

 

3.アフォーダンスの応用

ここまでは製品や建築についての例を見てきましたが、アフォーダンスの概念は実は人間関係や自己啓発にも応用することができます。

 

 

3-1.人間関係

人間関係を良好する秘訣は、両者のアフォーダンスを最適化することです。

僕の「暑いですね」という言葉から「外で話すのはやめましょう」というアフォードをピックアップできた人は、僕から評価されることになりますが、言葉通りの「暑いですね」というアフォードをピックアップしてしまった人は、僕から気の利かない人という評価を下されることになります(笑)

言葉以外にも、服装から「褒めてほしい」というアフォードをピックアップできた人は、その人の心をグッとつかむことになるでしょうし、しっかりした性格から「本当は甘えたい」というアフォードをピックアップできた人は、その人と信頼関係を築くことができるはずです。

人間関係の深さは、アフォーダンスが適切にデザインされているかどうかによって決まります。

僕らは仲がいい人ほど相手が受け取ってほしいアフォードをピックアップしやすく、仲が悪い人ほど相手が受け取ってほしくないアフォードをピックアップしやすいです

言い換えると、仲がいい人ほど相手の良い面や深い面が見えて、仲が悪い人ほど相手の悪い面や浅い面ばかりが目につくということです。相手の良い面と深い面をたくさん知っていたら、嫌いになるなんてことはまずないと思います。

僕らが相手を嫌うのは、相手のことをほとんど理解していないからであり、両者の間でアフォーダンスが適切にデザインされていないからです。

人間関係でつまいづいたときは、自分が相手から何をピックアップしているかを考えてみてください相手の悪いところ、嫌いなところ、ダメなところばかりピックアップしていませんか?

相手はそんなアフォードをピックアップしてほしいと思っているのでしょうか?そこを自分が修正できれば、相手もこちらが望むアフォードをピックアップしてくれるようになります。

人間関係をアフォーダンスの視点から眺めると、こういった応用が可能になるワケです。

 

 

3-2.自己啓発

自己啓発には成功と失敗の話が必ずと言っていいほど出てきます。

どんな成功者もたくさんの失敗を乗り越えてきた。失敗を恐れる人は成功できない。そんなことが言われるワケですが、これをアフォーダンス的に見ると、失敗とは、ある事実から「失敗」というアフォードをピックアップしたことを意味します

不合格だった、痩せなかった、売れなかった、振られたなどの事実はどれも失敗だと思われがちですが、それは単にピックアップしたものがたまたま「失敗」というアフォードだったにすぎません。

1つの事実にはもっといろんな可能性が内在していて、そこから何をピックアップするかは本人のピックアップ能力次第です。

つまり失敗を失敗としか思えない人、失敗を恐れて何もできない人は、ピックアップ能力が著しく低い人であり、自分と世界のアフォーダンスが適切にデザインできていない人なのです

こういう人が人生を変えるには、ピックアップ能力を高める訓練が必要になります。

 

 

4.ピックアップ能力を向上させる方法

ピックアップ能力とは要するに視点の多さです。

1つの物事をどれだけ多角的に見ることができるかが、ピックアップ能力の大きさに対応しています。

これは一朝一夕に身につくものではありませんが、伸ばす方法はありますので、そのための訓練をいくつか紹介します。

 

 

4-1.モノの使い方を100通り考える

これが一番直接的な訓練ですね。

電球の使い方や水筒の使い方、メガネの使い方、ハサミの使い方などなんでも構わないので、身近なものの使い方を100通り考えてみましょう

100通りにこだわる必要はないんですが、100個もアイデアを出そうと思うと、50個目ぐらいからは相当イノベーティブな視点が必要になってきます。

10個や20個だと誰でも思いつく視点しか出てこないので、最低でも70個ぐらいは出したいところです。「量は質を凌駕する」と言われますが、この訓練はそれを実感できるものになっています。

100個出したときには相当ぶっ飛んだものが出ているはずですので、それを楽しむつもりでがんばってみてください(笑)

 

 

4-2.真逆のものをくっつける

これは非常に有名な良いアイデアを生み出すための思考訓練です。

熱いものと冷たいものをくっつける、硬いものと柔らかいものをくっつける、長いものと短いものをくっつける、サラサラしたものとザラザラしたものをくっつける、美しいものと醜いものをくっつける、人気のものと人気のないものをくっつけるなど、なんでもやってみてください

「外はサクサク、中はもっちり」みたいな食べ物って多いですよね。それもサクサクともちもちという相反するものがくっついているから美味しく感じるワケです。

上記で紹介した紙の建築も、こういう発想が土台になっているように思います。紙のようなペラペラのものと、建築のようなカチカチのものをくっつけるとどうなるか、という感じで。

いちいち時間を作って真剣にやる必要はないですが、気が向いたらやってみてください。

 

 

4-3.強引に正当化する

これは間接的な訓練です。

バカリズムのコントに「おっぱいを触ることを理論的に正当化しようとする」というのがあります(笑)。こういうアホなことを考えましょう(笑)

銀行強盗を正当化する、痴漢を正当化する、約束を破ることを正当化する、食い逃げを正当化する、公約違反を正当化する、不倫を正当化するなどなどですかね。

この訓練は普段僕らがダメだと決めつけていることに対して「実はダメじゃない」というアフォードをピックアップするために重要になります

アフォーダンスは思い込みによって偏ってしまうので、これも気を付けたいですね。

 

 

5.デザイナーの仕事

僕らが心地良さや素晴らしさを感じるモノやコトは、必ずアフォーダンスが適切にデザインされています。それはすなわちストレスを軽減しているということです。

ゲームをする際のストレスを軽減したのがWiiであり、買い物をする際のストレスを軽減したのがAmazon GOであり、被災した際のストレスを軽減したのが紙の避難所です。

僕らの世界には、まだまだ見えないストレスがあります。

その見えないストレスを見つけて解消してやること、それがアフォーダンスを適切にデザインすることであり、デザイナーの仕事なのです。

よい人生をデザインしたいなら、よいデザイナーを目指しましょう。

ありがとうございました。

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コメント (5)
  1. トマトだいすきおじ より:

    デザインの本を読んでいくうちにこの言葉に躓いてしまいこちらを訪問させていただきました。
    パターン分けから例示まで大変参考になりました。
    理解が少し深まったように思います。
    ありがとうございました。

    1. 杉野裕実 より:

      こちらこそお役に立てて嬉しいです(^^)
      また何度でも復習しに来てください(笑)

  2. ともよ より:

    すごくわかりやすい説明をありがとうございました。
    保育士の勉強でアフォーダンスを調べててこちらにたどり着き、思いがけず人生の勉強にもなりました。
    これからは、合わない人に出会ったとき
    アフォードに気をつけてみようと思います。
    感動したのてコメント貼っときます。

    1. 杉野裕実 より:

      ともよさん、コメントありがとうございます。
      お役に立ててよかったです(^^)
      また何かあれば参考にしてくださいませ♪

  3. 『縮約(縮退)自然数』 より:

     ≪…あるモノに内在している人間が選択しうる行為の可能性…≫の≪…あるモノに内在…≫を、[数の言葉](⦅自然数⦆)の生りたちに観る。

     すると≪…人間が選択しうる行為の可能性…≫を[事象(現象)]に対して[表現(意味)]できる事を、[万人に普遍]な⦅自然数⦆が[道具]に生ることに気付く。 
    ≪…アフォーダンス…≫を、数学妖怪キャラクターの『(わけのわかる ちゃん)(まとめ ちゃん) (わけのわからん ちゃん)(かど ちゃん)(ぐるぐる ちゃん)(つながり ちゃん)』で掴みたい。

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