ども、杉野です。
ベイトソンと言えばダブルバインド、と言われるほどベイトソンの代名詞のようになっているダブルバインド理論。
ダブルバインドな状況に置かれるとどんな人でも統合失調症(ベイトソンの時代は分裂症と呼ばれていた)になりうる、というのがベイトソンを代表とする研究者たちの主張です。
現代社会では普通に生活しているだけでもダブルバインドな状況が簡単に作られてしまうため、僕らはいつでも統合失調症になり得ます。
そこで今回は会社や家庭、恋愛などの例を挙げて、
などを解説していきたいと思います。
ダブルバインドとは、対象者に禁止命令とそれと矛盾するメタ的な禁止命令が繰り返し提示され、対象者がその矛盾した命令から逃れられない状況のことです。
この状況に置かれ続けると人は統合失調症(分裂症)になるというのがベイトソンの主張(仮説)です。
例えば会社では自分の成績が上がると周りから妬まれ、妬まれるのを避けると成績が下がって上司から怒られる、みたいな状況がありえます。
このとき僕らは
の2つの矛盾した禁止命令を受け取ります。
ここで妬まれないように良好な関係を作ったり会社を辞めたりできればダブルバインドにはなりません。
でも僕らは大抵この矛盾した状況を「我慢する」という選択をして、繰り返し矛盾した禁止命令を受け続けることになります。
その結果、うつ病などの統合失調症を発症してしまうワケです。
重要なのは、矛盾した禁止命令があるだけなら何も問題はない、ということです。
「いつ会社を辞めても大丈夫」というような心理状態で仕事をしているなら、どんだけ矛盾が多い状況になっても辞めれば済む話です。
社員がみんなクソなんで今日で辞めます、みたいな。
こういうホリエモンみたいな人はまずダブルバインドにはハマらないし、統合失調症にもなりません。
でも真面目に学校や社会のルールを守って生きてきた人はそれができないんですね。
どうしても情が湧いたり、自分がいなくなったあとのことを考えたり、世間体を気にしたりしちゃう。
そういう優しくて真面目な人ほどダブルバインドにハマりやすいのです。
現代の家庭で一番典型的なのは
というダブルバインドだと思います。
こういう矛盾が生まれるのは親が自分にウソをついているからです。
本当は自分のやりたいことがあるのに、子供や家庭があるから「我慢して」今の仕事をしている。
だから子供には我慢せずに生きてほしいと思う一方、「私も我慢してるんだからお前も我慢しろ」という考えを押し付けるワケですね。
「勉強しろ」とか「家事を手伝え」とか「ゲームばっかりするな」とか、そういうのが「お前も我慢しろ」の例。
彼らを責めるつもりはないし、彼らだって好きでそうなってるワケじゃありません。
しかし彼らの「我慢」が子供に及ぼす見えない影響は甚大なものなのです。
『精神の生態学』の中でもダブルバインドな家庭の特徴が挙げられているので、紹介しておきましょう。
- そこには、母からの愛を感じて近寄っていくと母が不安から身を引いてしまう、そういう母親をもつ子がいる(中略)
- そこには、わが子に対して不安や敵意を持っていると認めることができない母親がいる。(中略)
- そこには、母子関係の間に割り込み、矛盾のしがらみにとらえられた子供の支えになるような存在-洞察力のある強い父親など-がいない。
(引用元:グレゴリー・ベイトソン著『精神の生態学』 P301より)
この状況では
という2つの矛盾した禁止命令が子供に課せられます。
この状況が生まれるのも結局、母親が自分にウソをついているからです。
本当は自分は子供を愛していないのに「母親は子供を愛さなきゃいけない」という先入観が彼女にウソをつかせているワケですね。
「強い父親」などがいれば、子供はこの状況(母親)から逃れることができるのですが、そういった逃げ場が用意されないと子供はずっと母親の矛盾した命令を受け続けることになります。
母親に近づけば嫌な顔をされ、母親から離れると「お母さんが嫌いなの?」と言われる。
この状況に「適応」した結果、子供は統合失調症になるのです。
統合失調症は病気であると同時に、1つの進化なのだということを僕らは理解しておくべきでしょう。
会社でのダブルバインドはまだ「辞めることができる」という点で家庭でのダブルバインドよりはましです。
それでもブラック企業の過労死や自殺、うつ病退職などが今も無くならないように、その関係性から逃れられない人もたくさんいます。
最近の例で言うと電通の女性社員の自殺ですね。
あの事件の場合、会社からは
という矛盾が課され、母親からは
というダブルのダブルバインドによって彼女は追い詰められたと言えます。
母親に悪気がなかったのは当然です。
しかし、優しい母親に育てられた子は親思いの優しい子に育ちます。
私がしっかりしなきゃいけない、私が活躍して親孝行しなきゃいけない。
こういう思い込みで自分を犠牲にしてしまうんです。
自分を捨てるという発想は出ても、会社や親を捨てるという発想は出てこない。
あの事件はそれゆえの悲劇と言えるでしょう。
会社でよくあるダブルバインドは会議での
という矛盾です。
会社を変革するようなアイデアが求められてるのに、不可能そうな案やバカげた案を出すと怒られる。
黙ってても怒られるから、当たり障りのない意見を言うと「面白くない」とか言ってまた怒られる。
こんな上司や先輩がいる会社はさっさと辞めた方がいいですね。
他にも
なんかも典型的です。
もう休み時間に入ってるし、周りは「休んでいいよ」って言うんだけど、他のみんながまだ仕事を続けている空気の中で自分だけ休むなんてできない。
休んだら休んだで「アイツ、新人のくせに先に休憩行きやがった」という空気が流れる。
こういう会社も嫌な感じですね。
いずれにしても、
自分にウソをついている人が多い職場はダブルバインドが生まれやすいです。
なので変な精神疾患になりたくなかったら、可能な限りみんなが自分に正直に楽しく働いている職場で働くようにしましょう。
家庭や会社と同じように、恋愛でもダブルバインドは普通に起こります。
例えばメールやラインでは好意的なことをたくさん言ってくるのに、全然デートしてくれないという矛盾が恋愛では結構あります。
このとき、僕らは「どういうことなんだ?」と思って相手のことが気になるワケですが、これはそういう恋愛テクニックです。
このようにダブルバインドを効果的に使うことができると、相手を落とすことができしてしまいます(笑)
悪い例は僕が経験しました。
僕が以前付き合っていた彼女の母親は非常に頑固な人で、彼女は母親にウソをつかなければ僕と会うことができませんでした。
僕は彼女にウソをつかせたくない半面、やっぱり会えないのは辛いので、彼女とはウソをこじつけて会っていたんですが、結果としてこの矛盾が僕を鬱病に追い込むことになります。
「会いたい」という言葉に対して、僕の中で罪悪感というメタ的な禁止命令が発され、僕は矛盾を抱えることになったのです。
この「会いたいけど会ってはいけない・会ってはいけないけど会いたい」というダブルバインドな状況に置かれた僕は鬱病を発症しました。
最初は不眠症だけだったので単なるパソコンの見すぎだと思っていたんですが、パソコンをやめても治らず、おかしいと思っているうちにどんどん症状は悪化していきました。
幸い、僕は友人に「別れた方がいい」と言ってもらえたので、今こうして無事にこんな文章を書いていますが、まさか好きで付き合ってる恋人が鬱病の原因だなんて、普通は思わないはずです。
彼女のことはまだ好きだったし、何の落ち度もない彼女に別れ話を切り出すのはとても辛かったですが、やむをえず彼女を納得させるために「もう好きじゃなくなった」というウソをついて別れました。
今振り返ってみると、本当は罪悪感なんて感じる必要はどこにもなかったんだと思います。
彼女が母親にウソをつくのは仕方のないことだったし、それは彼女の意志で、彼女がそうしたいからそうしていたワケですからね。
でも、僕みたいにクソ真面目な人間はそういうところを気にしてしまうんです(苦笑)
僕の話が参考になるかどうかは分かりませんが、僕と同じ失敗はしないでくださいね。
これはどんな場合も同じで、
一刻も早く関係を切ること
です。
会社をやめる、家を出る、恋人と別れるなど、とにかくその関係から逃げてしまえばダブルバインドは解消されます。
ただ幼い子供の場合はこれがしたくてもできない(関係を切ってしまうと生きていけない)ために、ダブルバインドな状況に置かれてしまうと統合失調症にならざるを得ません。
一度統合失調症になってしまうと、ダブルバインドに対応したコミュニケーション、つまり意味の分からないメタファーを語るなどの会話が普通になるため、治療は難しいです。
家族療法などの治療法はあるので絶対無理だとは言いませんが、ほとんどの家族がその治療が辛すぎて断念してしまうことからもその難しさは伝わると思います。
何の病気でもそうですが、自覚症状が出てからじゃ遅いんです。
ここで話したようなことを普段から気に留めおき、それが起こる前に対処してください。
冒頭で言ったように、現代社会というダブルバインドが氾濫する世界において、僕らは誰でも統合失調症になり得ます。
そういったダブルバインドな関係性は遅かれ早かれ破滅するようにできています。
それが自然の摂理です。
会社であれ、家族であれ、恋愛であれ、その破滅の巻き添えをくらいたくなければ、一刻も早くその関係から抜け脱しましょう。
僕らの居場所は、そんなところではないはずです。
ありがとうございました。
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